職務給の構築サポート
「職務給」を用いたジョブ型賃金制度の構築サポート
同一労働同一賃金の実現のためには、「職務内容、職務内容及び配置の変更の範囲、その他の事情」を勘案して待遇を決定する必要があります。しかし、そもそも「職務」を基準とした人事賃金制度(職務給)にしておけば、正社員、非正規社員の区別なく「職務」に応じた待遇となるので、簡単に「同一労働同一賃金」を実現することができます。会社はガイドラインの解釈や今後の裁判例に迷うこともなくなりますし、社員の自分の給与や待遇に対する納得性を高める効果もあります。
そのためにはまず、職務によって等級が決まる職務等級制度を構築し、報酬の仕組み(賃金制度)として「職務給」を導入します。さらに社員の行動や成果を評価する評価制度を策定し、「職務給」を用いた総合的な人事制度を構築していきます
■職務給とは
職務給は、職務の性質および価値で賃金を決める賃金制度です。賃金を、「人の特性や能力」ではなく、「労働の価値」に紐づける考え方です。同じ職務(仕事)であるかどうかの分析と価値づけのために、職務分析、職務評価を実施します。
「職務給」は職務の賃金率であり、階層化された賃率(職階級)構造または体系のものです。一組織内のすべての職務が職務評価の技法を経て一定の職階(級)に編成され、この職階(級)に応じて賃金率が設定されます。したがって、職務は異なろうとも同一価値と評価された職務は一括して同一賃金となります。
■職務給、職能給の比較
現在、日本の多くの企業が導入しているのが職能給制度です。「職能給」では、社員の「職務遂行能力」に応じて賃金を支給します。評価基準は、知識、資格、管理能力、コミュニケーション能力など。現在の職務に関係のない「潜在能力」も評価対象です。仕事を通じて能力は向上していくので、たとえその能力を発揮していなくても給与は上昇していきます。いったん得た能力がなくなることは考えにくいので、基本的に降級、降格はありません。
「職能給」が「人」の「能力」を評価し、能力の向上を指標に賃金を決定するのに対し、「職務給」は「職務」を評価し、その職務の成果で賃金を決定することが大きな違いです。
■職務給導入のための職務分析・職務評価とは
職務給を導入するためには、まず職務の分析を行います。先に述べた「職務分析・職務評価の導入支援」では、社員全員の職務を分析する必要はありませんが、職務給を導入する場合には、社員全員の職務を明らかにする必要があります。まず、各労働者がどのような仕事を担当しているのかを一覧表にまとめ、同一ないし類似の仕事をしている職位をまとめて1つの職務として一応みなしたうえで職務編成します。
職務分析の結果は、「職務記述書」というドキュメントにまとめます。ここに、職務内容、職務要件、職務責任、職務権限をまとめます。
※職務記述書(job description)とは
担当する職務の内容、責任を詳しく明示した文書のこと。文書の目的は業務上必要とされるスキルや求められる成果などを、担当する職務(ポジション)ごとに明確化させることです。
職務給導入の実施プロセス
- 質問紙・ヒアリングにより職務分析を実施
- 職務内容を一覧表として整理
- 職務を難易度により5~10程度の等級に分類(職務等級制度決定)
- 社員ごとに職務記述書(job description)を作成
- 職務等級にあわせて職務を分類(同じ職務でも、レベルにより等級が違う)
- 職務別の評価シート作成
- 社員に説明。運用開始。
その職務に必要な能力が明示されているため、社員はその能力があるとしてそのポジションに採用、配置されたことがわかります。この職務記述書があることにより、その人の保有能力を評価する必要はなくなり(すでにその職務が遂行できる能力があると評価済のため)、成果のみで評価することができるようになります。
職務給導入のメリット
職務給を導入した場合、職務の内容、責任に応じた賃金の差異を設定するので、職務上の地位と実質とを反映した公正な賃金を確立することができます。それにより以下のようなメリットが考えられます。
- 同一労働同一賃金を実現できる。
- 透明性の高い給与、評価により、社員の仕事へのモチベーションが高まる。
- 職務内容の明確化により、仕事の無駄や重複が排除され、効率化が図れる。
- 年齢、勤続年数に関係なく、職務の内容・責任に応じた賃金が支払われるため、優秀な人材の流出が防げる。また、優秀な人材を採用できる。
- 人件費の自然膨張がないため、人件費予算および採用計画の確立が容易となる。
- 職務分析により各職務の必要とする能力が明らかになり、教育訓練の方針が立てやすくなる。
- 基本的に人事異動がないため、社員にプロ意識が芽生え、プロフェッショナルが育つ。
- 職務や権限が明確なため、テレワークにも対応しやすい
■職務給導入のデメリット
- 基本的に空きポジションがない限り昇格できず、同じ等級にとどまる限り大きく昇給しないので、社員のモチベーションが下がりやすい。
- 同一価値レベルの職務でなければ異動が難しい。
■職務給導入に適している企業様
職務等級制度・職務給のメリット、デメリットを比較した場合、社員の異動が頻繁にあり、スペシャリストではなく、ジェネラリストを育成したいという経営方針の企業様には、職務給の導入は難しい面があります。一方、職務内容がすでにある程度明確であり、職種間の異動をあまり想定しておらず、各職種のスペシャリストを育成したいと考えている企業様には職務給は適していると考えられます。特に、病院、介護施設、士業の事務所、飲食業界、宿泊業界などと相性の良い制度です。
「職務評価」や「職務給」ときくと、大企業向けなのではと感じる企業様もいらっしゃると思いますが、職務分析・職務評価については職種が少なく、労働者数も少ないほうが、詳細な分析・評価につながりますし、導入もスムーズですので中小企業にこそ適している賃金制度といえます。