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【社労士が解説】知っておきたい企業のハラスメント防止策のポイント

はじめに~ハラスメントとは

職場におけるハラスメントには、大きく分けて、「パワーハラスメント」、「セクシュアルハラスメント」、

「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」があります。

パワーハラスメント

2019年に改正された「労働施策総合推進法」において、職場におけるパワーハラスメントについて事業主の防止措置が義務付けられました。

大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から対象となります。

パワーハラスメントの定義は、職場において行われる

①優越的な関係を背景とした言動であって

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

③労働者の就業が害されるもの            であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものです。

 

セクシュアルハラスメント

男女雇用機会均等法第11条により、職場におけるセクシュアルハラスメントについて事業主に防止措置が義務付けられています。

セクシュアルハラスメントとは、職場について行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されたりすることです。

 

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

男女雇用機会均等法第11条の3及び育児・介護休業法第25条にて、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて、事業主に防止措置をとることが義務付けられています。

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることです。

 

事業主に必要なハラスメント防止対策

職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置が、以下のように厚生労働大臣の指針に定められています。事業主はこれらの措置について必ず講じなければなりません。

※パート労働者、派遣労働者、外国人労働者なども含んだ全ての労働者が対象です。

 

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

「事業主の方針」とは「ハラスメントは許さない」という方針です。会社として、「ハラスメントを行ってはならないこと、ハラスメントの内容、もしそのような社員がいれば厳正に対処することを明確にして、従業員に周知します。就業規則やハラスメント規程に規定する(懲戒については必ず就業規則に定める必要があります)、会社の方針を示した文書を別に作成する、定期的にハラスメント研修を実施するなどの方法があります。

②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

「ハラスメント相談窓口」を設けることが必要です。例えば、人事部や総務部などの社内の窓口でもよいですし、外部の専門家に窓口になってもらうこともできます。

③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

相談窓口にハラスメントの相談があった場合は、企業は責任を持って以下の対応をする必要があります。

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認する
  • 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
  • 事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行う
  • 再発防止に向けた措置を講じる

→これらの詳しい対応については、次項の「ハラスメントが起こってしまった場合の対処方法」をご覧ください

 

④併せて講ずべき措置

併せて講ずべき措置として、以下の2つが定められています。

  • 相談者・行為者のプライバシーの保護
  • 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、労働局の援助制度を利用したこと等を理由として解雇その他不利益な取り扱いをしない旨を定め、労働者に周知すること

 

「ハラスメント相談窓口」の対応ポイント

ハラスメントの被害者がまず相談するのが「ハラスメント相談窓口」です。ここで、しっかりと話をきいて適切な対応ができるかどうかが、その後のハラスメントに対する企業対応にも大きな影響を及ぼします。以下のポイントに気を付けて、相談窓口を設置しましょう。

①「ハラスメント相談窓口」の存在をPR

ハラスメント窓口はなんとなく人事部長・・・というように、企業内で暗黙の了解がある企業様も多いです。しかし、パートや派遣、外国人労働者など従業員全員にハラスメント窓口を周知することが企業の義務なので、「知らなかった」という人がいないように、ハラスメント窓口は誰で、どうやったらコンタクトを取れるのかを明らかにし、従業員全員に文書や社内メール等で周知しておくことが大切です。

②窓口担当者は適任者を選定

窓口担当者は、最初にハラスメントの相談を受ける重要な役割を担います。「あなたがもう少し我慢するべきではないか」などのアドバイスを安易にしてしまい、二次被害を生む場合もあります。ハラスメントについて豊富な知識があり、的確に対応できる人材を配置するべきです。

③ハラスメント相談マニュアルの作成

ハラスメントの相談は突然やってきます。慌ててしまって対応が後手に回らないよう、ヒアリング票や相談をうけてからのフローを示したマニュアルなどを事前に用意しておきましょう。

④外部相談窓口の検討

中小企業などで、相談をしてしまうとハラスメントの相談者・行為者がすぐに明らかになってしまうような場合や、社内の相談窓口では対応が困難な場合などは、弁護士や社会保険労務士などと契約し、外部の相談窓口を設けることもできます。事後対応を安心して任せられる、労働者にとって安心感があるなどのメリットがあります。

⑤相談があったことを喜ぶ

「ハラスメントの関する相談はいままで1件もない」ということは良いことのようですが、実はそうとも限りません。相談窓口が機能せず、優秀な人材が泣き寝入りして離職したり、ハラスメントにより就業環境が乱されているのに我慢しながら働いている社員がいたりする可能性があります。ハラスメントで悩んだときに、「そうだ、会社のハラスメント窓口に相談してみよう」と社員に思ってもらえるのはとても大切なことです。

 

ハラスメントが起こってしまった場合の対処方法

上記①、②のハラスメント防止対策を十分に行っていても、残念ながらハラスメント(もしくはハラスメントの可能性がある案件)が生じてしまうことがあります。

その場合は、上記③の「職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応」をしっかりと実施することが大切です。

具体的には以下のような流れになります。

 

・事実関係を迅速かつ正確に確認

相談窓口の担当者や人事部門等が相談者及び行為者の双方から事実関係を確認します。相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致がある場合はや事実関係の十分な確認ができない場合は、第三者からも事実関係を聴取します。

実際にハラスメント行為があったのか、又はハラスメント行為に該当するのか微妙な場合もあると思いますが、問題となっている言動が直ちに中止され、良好な就業環境を回復することを優先することを念頭に、可能な限り事実確認をします。

・被害者に対する適正な配慮の措置の実施

事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行います。被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換などが考えられます。ハラスメント行為が原因で被害者が休職していた場合は、現職に復帰できるよう積極的な支援を行います。

・行為者に対する適正な措置の実施

事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行います。具体的には、就業規則やその他の職場における服務規律等を定めた規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じます。個人間の問題として当事者の解決に委ねるのではなく、会社として対応することが大切です。

・再発防止措置の実施

改めて、職場におけるハラスメントに関する方針(「職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針」、「ハラスメントを行った者について厳正に対処する旨の方針」「妊娠・出産・育児休業に等について制度が利用できること」)を、社員に周知します。周知・啓発の方法は、社内報、社内電子掲示板、パンフレット等の利用、ハラスメントセミナーの開催などが考えられます。

ハラスメントの事実確認ができなかった場合も、行為者に会社の方針を伝え行為の抑制を促すことができるため、この再発防止措置は有効です。

 

ハラスメント対策に困ったときは・・・

上記のように、ハラスメントが起こってしまった場合は、迅速・適切に対応することが企業の義務となっているため、担当者はハラスメント案件の処理に追われることになります。ハラスメントは全く同じ事案はなく、ハラスメントを行った背景や状況、双方の立場や意向などすべてが個別の案件ごとに異なるため、適切に処理することはとても難しいです。

そんな時に、対応をサポートできるのが、「社会保険労務士」です。社会保険労務士は労務管理の専門家であり、ハラスメント対策の専門家でもあります。ハラスメント対策の中で、社会保険労務士に依頼できる内容は色々とあります。

例えば・・・

  • ハラスメントに関する就業規則・規定類の策定
  • ハラスメントに関するセミナー・研修の実施
  • 相談窓口対応、又は相談窓口担当者からの相談対応
  • ハラスメント案件のヒアリング、事実確認への同席・アドバイス
  • 被害者に対する適正な配置についてのアドバイス
  • 行為者に対する適正な措置についてのアドバイス                 などです。

 

たとえハラスメントが起こってしまっても、専門家である社会保険労務士が第三者として介入することで、当事者の納得感を高め、企業担当者様に安心して対応していただくことができます。

特に当事務所の社会保険労務士は、広島労働局の雇用均等指導員として勤務し、広島県内の企業を年に50社程度訪問し、ハラスメント対策について助言・指導するなどハラスメント対策について様々な案件を経験しています。ハラスメント対策でお困りのことがあれば、ぜひ当事務所にご相談ください。

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